「習慣を作るのは、毎日成長するため」——そう考える人は少なくありません。ただ、それだけではないようにも思えます。悪い方向へ流されないために、あらかじめ通り道を決めておく。習慣には、そうした側面もあるのかもしれません。
人間は、放っておくと楽な方、刺激が強い方、すぐに報酬がもらえる方へ流れやすい、と言われます。空き時間はSNSになり、疲れれば先延ばしになり、暇なら娯楽になる。何も決めていない時間ほど、その場の気分に引っ張られやすい、という話です。
行動経済学では、これを「現在バイアス」と呼ぶことがあります。将来の利益より、今すぐ得られる快を優先しやすい傾向です。意志の弱さというより、脳の初期設定に近い、という見方もあります。だから「気合で耐える」より、「流れ先を先に埋めておく」方が続きやすい、という考え方もあります。
先に良い行動を習慣として置いておくと、流される余地そのものが減りやすい、と言われます。朝の数分を読書に、夜のひと区切りを散歩に、といった小さな枠を先に置いておく。すると、その時間は「何をしよう」と迷う前に、すでに行き先がある状態になります。
心理学では、こうした先決めを「実行意図」と呼ぶことがあります。「もし〇時になったら、△をする」と条件と行動をセットにしておくだけで、開始のハードルが下がりやすい、という研究もあります。完璧なルーティンである必要はなく、きっかけがはっきりしている方が続きやすい、という指摘です。
もちろん、習慣がすべてを解決するわけではありません。体調や環境が変われば、一度置いた枠が合わなくなることもあります。そのときは、やめるのではなく、負荷を少し下げる。5分を2分にする、場所を変える。そうして「ゼロにしない」ことを優先する人もいます。
習慣とは、自分を前に進めるエンジンであると同時に、簡単な方へ流され続けないための堤防でもあるのかもしれません。大きく変わるためというより、知らないうちに望まない方へ滑らないために、小さな通り道を先に置いておく。そんな使い方もあるように思います。
パスボックス情報局では、こうした日々の小さな工夫を発信しています。𝕏でも同じテーマで投稿しているので、よければフォローしてもらえると嬉しいです。