「強み」は後から見つかる? 最初の寄り道がキャリアを強くする理由

キャリアについて、「自分の強みを早く見極めて、専門性を高めていくのが正解」というイメージを持っている方は少なくないかもしれません。ただ、実際のところ、多くの人にとっては少し違うプロセスを辿る方が、結果として外れにくい道を作っていけるケースが多いようです。

何でもできてしまう天才を除くと、大抵の人のキャリアは、次のようなサイクルを回すことで段階的に構築していくと、比較的安定しやすいと言われています。

1. 色んな仕事をしてみる

2. 自分の特性と社会のニーズが合致するポイントを見つける

3. そのポイントに特化した仕事をしてみる

4. ③で得たことを軸足に、次の合致ポイントを見つける

5. そのポイントでまた仕事をしてみて、キャリアの広がりを作る

6. 以下、その繰り返し

この流れのポイントは、「最初から完璧な強みを決めてしまわない」ことにあるようです。むしろ、最初に少し遠回りをしておく方が、後で効率的に絞り込んでいけるケースが多い、という見方です。

試行フェーズを避けると起きやすいこと

失敗しやすいパターンのひとつとして挙げられるのが、①の「試行フェーズ」を避けてしまうことです。自分が「これが強みだ」と早めに思い込んで専門性を絞ってしまうと、実際の市場ニーズとずれてしまい、市場価値が上がりにくくなることがあるようです。

これは、心理学的に見てもある程度説明がつくかもしれません。人は自分の経験が少ないうちほど、自分の特性を正確に把握しにくい傾向があると言われています。実際にいくつかの仕事に触れてみて初めて、「意外とこの部分が自分に合っていた」「このニーズと自分の特性が噛み合った」と感じられるケースは少なくないようです。

また、キャリア研究の分野でも、早期に一つの領域に特化するよりも、幅広い経験を積んだ人の方が長期的に選択肢を広げやすいという指摘があります。たとえば、David Epstein氏の『Range(レンジ)』では、成功した人の多くが「専門化する前に、複数の領域を試していた」というパターンが紹介されています。完全に同じ話ではありませんが、最初の「無駄足」が後の軸足を強くする、という点で通じる部分があるように思います。

日本の労働市場を見ても、以前のような「一つの会社で長く働く」スタイルが主流だった頃と比べると、複数の経験を持つ人の方が転職市場で評価されやすい傾向が出てきているようです。もちろん、すべての人がそうというわけではありませんが、変化のスピードが速い時代においては、最初から一点に絞りすぎるより、試行錯誤を通じて「合致ポイント」を見つけていく方が現実的な場合もある、という見方です。

サイクルを回すときに意識しておきたいこと

このサイクルを回すうえで、特に意識しておきたいのは「③で特化したあとも、完全に固定化しない」という点です。特化した経験を軸足にしつつ、次の合致ポイントを探していくことで、キャリアが単線ではなく、少しずつ広がっていく形を作れるかもしれません。

たとえば、ある領域で一定の成果を出したあと、その経験を活かせる隣接領域に移る、あるいは副業やプロジェクト単位で新しい領域に触れてみる、といった動きが、次の合致ポイントを見つけるきっかけになるケースは少なくないようです。このとき大切なのは、「今の自分に合っているかどうか」を、頭の中で考えるだけでなく、実際に触れてみて確かめることかもしれません。

また、試行錯誤の過程で「これは自分に合わない」と感じる経験も、無駄ではないことが多いようです。合わない理由がわかれば、逆に「ではどこなら合いそうか」という次のヒントになる場合があるからです。

まとめ

キャリアは、最初から「これが自分の道だ」と決めて一直線に進むものというより、試し、合致ポイントを見つけ、特化し、また次のポイントを探す、というサイクルを回しながら、少しずつ形にしていくものかもしれません。

最初の試行フェーズを「無駄」と捉えて避けてしまうと、後から軌道修正が難しくなるケースもあります。一方で、最初に少し寄り道をしておくことで、後から効率よく絞り込んでいける可能性は残されているように思います。

もちろん、すべての人に当てはまるわけではありません。ただ、もし「自分の強みがまだはっきりしない」と感じている段階であれば、まずはいくつかの仕事やプロジェクトに実際に触れてみて、特性とニーズが重なる場所を探してみるのも、ひとつの選択肢になるかもしれません。

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