クラシックの楽譜や演奏会のプログラムを見ると、「円舞曲」「奏鳴曲」「遁走曲」といった漢字が並んでいることがあります。カタカナの「ワルツ」「ソナタ」「フーガ」と同じ曲を指している場合が多く、明治以降に西洋音楽を日本語で説明しようとした名残のようです。
意味をざっと押さえておくと、曲の性格や当時のイメージが少し想像しやすくなるかもしれません。
舞曲・舞踏系
• 円舞曲=ワルツ
3拍子で回りながら踊るイメージから「円舞」と訳されたようです。ウィーンのシュトラウス父子の管弦楽ワルツや、ショパンのピアノ小品のように、実際に踊るためではなく鑑賞用に書かれたものも少なくありません。
• 行進曲=マーチ
足を揃えて進むリズム。軍楽からコンサート用まで幅があります。
• 舞踏曲=ポロネーズ
ポーランド起源の堂々とした3拍子。ショパンの作品がよく知られています。
• 輪舞曲・回旋曲=ロンド
主題が何度も戻ってくる形式。明るい終楽章に使われることが多いようです。
大きな器楽形式
• 奏鳴曲=ソナタ
「鳴らすもの」という意味のイタリア語から来ています。複数楽章の独奏曲や室内楽を指すことが多く、第1楽章にソナタ形式が置かれるのが典型です。小さなものはソナチネと呼ばれます。
• 交響曲=シンフォニー
オーケストラのための大規模な多楽章作品。
• 協奏曲=コンチェルト
独奏楽器とオーケストラが掛け合う形。
• 変奏曲=バリエーション
一つの主題をさまざまな形に変えていく手法です。
雰囲気や技法を表すもの
• 小夜曲=セレナード
夜に窓の下で奏でるような、優しく明るい曲想。
• 夜想曲=ノクターン
夜の静けさや幻想をピアノで描いた小品。ショパンの一連の作品が代表的です。
• 譚詩曲=バラード
物語性のある自由な曲。
• 幻想曲=ファンタジー
形式に縛られにくい即興的な響き。
• 狂詩曲=ラプソディー
民族的・叙事的なテーマを自由に展開したもの。
• 諧謔曲=スケルツォ
元は「冗談」の意味。速い3拍子で機知に富んだ楽章として交響曲などに入ります。
• 前奏曲=プレリュード
本来は本編の前に置く導入。独立した小品としても多く書かれました。
• 練習曲=エチュード
技術を磨くための曲ですが、ショパンやリストのように演奏会用の芸術作品になったものもあります。
• 間奏曲=インテルメッツォ
幕間や楽章の間に置く、比較的短い曲。
• 即興曲=アンプロンプテュ
その場で思いついたような自由な小品。
声楽・対位法
• 交声曲=カンタータ
独唱・合唱・器楽を組み合わせた声楽曲。「歌うもの」という意味です。ソナタ(鳴らすもの)と対になる言葉として使われてきました。
• 聖譚曲=オラトリオ
宗教的な物語を舞台装置なしで歌う大規模な作品。
• 追復曲=カノン
同じ旋律が時間をずらして重なる手法。
• 遁走曲・追復曲=フーガ
一つの主題が各声部を追いかける対位法の高度な形式。バッハの作品がよく例に挙がります。
• 狂想曲・寄想曲=カプリッチオ
気まぐれで技巧的な曲想を指すことがあります。
漢字表記は現在のプログラムでは減りつつありますが、古い楽譜や解説、翻訳書では今も見かけます。カタカナと漢字を両方知っておくと、同じ曲でも少し違った角度から聴けるようになるかもしれません。
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